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日本IBM株式会社 渡邉桂子 様

日本アイビーエム株式会社
リーダーシップ・プログラム担当次長
渡邉桂子 Keiko Watanabe

インタビュアー:株式会社日本エル・シー・エー 知識開発室 田畑耕一/高田晋治

ハーマンモデルを駆使し変革の巨人を育てるIBM

 これまで日本企業のほとんどが、こぞって効率性や画一性を追求してきた名残りで、未だ「横並び意識」から脱却できないビジネスマンが少なくないように思われます。


 そうしたビジネスマンに対し、多様性や個性について、心から実感していただく非常に有効なツールとして、脳優勢度調査「ハーマン・モデル」をこれまで何度か弊誌で取り上げ(弊誌10月号「脳の特性に基づく創造的チーム・ビルディング」参照)、また、拙著「イノベーション・マネジメント」でも紹介させていただきました。


 最近では、一般的に、脳に対する関心も高まり、「ハーマン・モデル」も徐々にビジネス界に浸透しつつあります。その中でも、特に効果的に「ハーマン・モデル」を活用している企業の一つが日本IBM。


 150カ国以上で展開する全グループ企業で、新任マネジャー研修「Basic Blue(ベーシック・ブルー)」のカリキュラムとして「ハーマン・モデル」を採用しており、2005年には、管理職にノミネートされている主任クラスの「プレ・マネジメント」研修にも導入していく計画だといいます。


 そこで今回は、日本IBMのような先進的な企業が、「ハーマン・モデル」などのツールを駆使し、どこまで深く"人間"について思考を巡らせているのかを、読者の皆様に知っていただきたく、同社でリーダーシップ研修のファシリテーターをされている渡邉桂子さんにお話を伺いました。
弊誌10月号「脳の特性に基づく創造的チーム・ビルディング」で予備知識をお持ちの上、お目通しいただければ幸いです。


――「ハーマン・モデル」の開発者ネッド・ハーマンが書いた著書「ハーマン・モデル」の中で、貴社に関する記述がいくつか出てくるんですが、実際には、いつ頃から研修プログラムとして採用されているんですか。


渡邉 個々の細かい取り組みに関してはわかりかねますが、全グループ会社共通の、新任マネジャー研修「Basic Blue」に取り入れたのは1998年ですね。
 「Basic Blue」は、数多くあるリーダーシップ研修の中の一つのコースで、「ハーマン・モデル」のカリキュラムは、5日間ある研修の初日の、半日を使って実施しております。


――以前、お話をお伺いしたGEさんは、「全員がリーダーシップを持たねばならない」という考え方の会社でしたが、貴社のリーダーシップ研修は全社員を対象に、指導力・統率力を養うといったものではない。


渡邉 そうですね。当社では、職位を10等級のバンドに分けておりまして、バンド8以上の管理職がリーダーシップ研修の対象となります。一般の企業で言うと、課長さんぐらいからですかね。
 と言いますのは、私どもの社内は、他社さんのように、課長を経験したら部長、次は事業部長という昇進ではなく、全てバンド(職位)で昇進が管理されております。課長や部長というのは職能格という別の基準で、これは業績だけではなく社歴に連動します。ですので、私が次長といっても、私の下にいくつか課があるかというと、そうではなくて、職はバンド9ですが、職能格が次長ということです。


――なるほど。バンド8になったばかりのマネジャーが「Basic Blue」を受講するということですね。
 話を戻しますと、Basic Blueに「ハーマン・モデル」を採用したのが1998年ということでしたが、やはり、90年代半ばに、元CEOのルイス・ガースナー氏によって行われた一連の改革の中で「ハーマン・モデル」が評価され、導入に結びついたということでしょうか。というのは、それまで貴社は「官僚的な組織の象徴」として語られることが多くて、ハーマン・モデルの特徴である「個性・多様性の尊重」という観点で行くと、合わなかったように思えますから。

ハーマンモデルの活用の狙い

渡邉 採用した経緯はよくわかりませんが、一つ言えることは、当社はガースナー氏の就任から始まった大規模なトランスフォーメーションの前から、ダイバーシティ(多様性)を重要視する企業だったということです。私は86年の入社ですが、「クリエイティブなことをやるには、多様性が必要だ」という考えは、私の中にはずっとありました。


 長く、100カ国以上の国々でビジネスを展開してきたわけですから、ダイバーシティを尊重する風土が根付いているのは不思議なことではないと思います。


――ハーマン・モデルを活用するねらいはどういうところにあるんですか。やはりダイバーシティの理解というところでしょうか。


渡邉 そうですね。ラインマネジャーに初めて昇進してくる人というのは、当然、その下の層のトップタレントが上がってくるわけですが、スタンドプレーでは優秀でも、部下を上手く使って優秀なチームプレーができるかというと、必ずしもそういうわけにはいきません。
 そこで、まず、基本的な診断であるHBDI(Herrmann Brain Dominance Instrument)を受けてもらって、自分自身の思考の特性を理解してもらう。これが結構、的を射た結果が出るので、「ああ、そうだそうだ」と盛り上がるんですよね。ご存知でしょうけど。
 そして、一緒に受講しているマネジャーと比べて、"違い"を認識し、自分を理解した上で、では何をしなければならないか、ということを考えてもらうようにしてるんですね。
 「自分が足りない部分をどうやって補うんでしょうか」とか「他のタイプの人に対して、どういう風に接するべきか」とか、考えてみてくださいと。

――自分がマネジメントするチームをホールブレイン(全てのタイプが揃った全脳型)にするために、欠けている部分をどうやって自分が担っていくのかとか、どういう役回りを果たしていくかとかを考えてもらうということですよね。
渡邉 それと、重要なのが、自分のモデルをわかった上で、じゃあ、自分はどうなりたいのか、ということを考えてもらうことです。そして、「なりたい自分に近づくため、何をしなければならないか」というアクションプランを立ててもらいます。
――それはライフプランのような長いスパンのものではない。
渡邉 そうです。研修が終わって、じゃあ、来週、職場に戻ってから、どんなことをしますか、といったようなことですね。
――私もファシリテーターになった際、HBDIを知ってよかったなという実感がありました。
 一緒に仕事をしていて、なかなか理解できない人物がいたんですが、「ハーマン・モデル」によって、なぜ理解できないのかがわかった。そして、お互いにどのように補い合えばいいのかもわかりました。
 しかし、研修をやる側にしてみると、効果の測定が非常に難しいと思うんですが。
渡邉 確かに、研修後、どういう風に現場で活用しているか、っていうのは、ちょっと測定できないですね。
 でも、当社の場合、もっと基礎研究的な活動の成果から、マネジャーの性格や能力がどのように会社の業績に影響を与えるかについて、一定の見解を導き出しておりますので、そこは、あえて測る必要はないんです。
 これは、IBMのマネジメントモデルというんですけど、もう少し詳しく申し上げますと、会社の業績に30%ぐらいの影響を与えるのが、組織風土であり、この組織風土に影響を与えるのが、マネジャーのマネジメントスタイルです、と。
 そしてマネジメントスタイルとは、マネジャーの役割であって、リードし、管理し、実行する。この「リード、マネージ、ドゥ」という3つの行動に、大きく影響するのが、マネジャーのキャラクターや思考特性、能力であるという考え方です。
 だから、先ほどのお話にもありましたが、マネジャー自身が自分をよく知り、部下と良好な関係を築き、お互いを補い合わないと、業績も上がらないということが、社内で共通認識として出来上がっているわけです。
 結局、最終的な数字で成果を測るわけですから、「ハーマン・モデル」の活用如何を評価する必要はない。これは昨今騒がれているコンピテンシーも同じですよね。
――場を提供したり、支援はするけれど、成果を上げるためのプロセスは個性に任せて、評価処遇には結び付けない。
渡邉 そうですね。当社は、よく成果主義にスポットを当てて取り上げられますが、むしろ社内で強調しているのは、長期的な人材育成なんです。リーダーシップは皆、人材育成の結果として成果がついてくると考えています。

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